No.198
Aryl Hydrocarbon Receptor in Health and Disease
Haonan Li, Yufeng Fan, Jizheng Liu, Shumin Dong, Bin Wen, Yunfei Zhang,
Xiaocui Wang, Xuemei Duan, Ying Hu, Ze Yan, Huifeng Shang, Yukai Jing
MedComm. 2025 Oct 17;6(11):e70426. doi: 10.1002/mco2.70426.
健康と疾患におけるアリル炭化水素受容体
アリル炭化水素受容体(AhR)はリガンド依存性の転写因子であり、環境、食事、微生物、および代謝からのシグナルを統合する重要な環境センサーとして機能する 。不活性状態ではヒートショックタンパク質90(Hsp90)、p23、X関連タンパク質2(XAP2)等のシャペロンと細胞質内で複合体を形成しているが、リガンドが結合すると核内へ移行し、アリル炭化水素受容体核移行因子(ARNT)と二量体化してDNA上の異物応答配列に結合することで標的遺伝子の転写を開始する 。AhRのシグナル伝達は、この標準的な経路に留まらず、上皮成長因子受容体(EGFR)やJAK-STAT経路を介した経路、さらには標的タンパク質の分解を促すE3ユビキチンリガーゼ活性など、さまざまな経路や代謝でなされる。また、AhRを介したシグナル伝達は、NF-κBやHIF-1α、エストロゲン受容体とのクロストークを通じて、細胞増殖や代謝、炎症応答を精緻に調節している 。また、生理学的に免疫恒常性の維持、ミトコンドリア代謝の調節、および肝臓や心臓、中枢神経系などの器官発生において重要な役割を担う 。特に免疫系においては、T細胞やB細胞、マクロファージ、樹状細胞などの分化と機能を制御し、抗炎症作用を発揮する 。重要なポイントとして、疾患におけるAhRシグナルは「二面性」を示す 。自己免疫性疾患や炎症性疾患では、AhRの活性化が病的過剰反応を抑制し病態を緩和する一方で、腫瘍微小環境においては免疫抑制を誘導し、抗腫瘍免疫を減弱させることで腫瘍の進展を助長する 。今後の臨床応用に向けた課題は、リガンドの毒性やオフターゲット効果を克服することにあり、マイクロバイオーム – AhR軸の解明や、組織特異的に作用する選択的AhRモジュレーター(SAhRMs)の設計が次世代の治療戦略として期待されている 。
山川真菜 2026/03