No.195
The aryl hydrocarbon receptor: structure, signaling, physiology and pathology
Xavier Coumoul, Robert Barouki, Charlotte Esser, Thomas Haarmann-Stemmann,
B. Paige Lawrence, Jörg Lehmann, Pedro Moura-Alves, Iain A. Murray,
Christiane A. Opitz, Gary H. Perdew, William Bourguet
Signal Transduct Target Ther. 2026 Jan 16;11(1):20. doi: 10.1038/s41392-025-02500-8.
B. Paige Lawrence, Jörg Lehmann, Pedro Moura-Alves, Iain A. Murray,
Christiane A. Opitz, Gary H. Perdew, William Bourguet
Signal Transduct Target Ther. 2026 Jan 16;11(1):20. doi: 10.1038/s41392-025-02500-8.
アリル炭化水素受容体:構造、シグナル伝達、生理、病理
アリル炭化水素受容体(AhR)は、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)/周期性タンパク質-AhR核内転写因子-単一機能タンパク質(PER-ARNT-SIM: PAS)ファミリーに属するリガンド依存性転写因子であり、かつてはダイオキシンや多環芳香族炭化水素に反応する「異物センサー」として理解されていたが、現在では発生、免疫調節、上皮分化、バリア機能維持、宿主-微生物相互作用まで担う統合的な制御因子として位置づけられる。リガンドが結合すると、細胞質でヒートショックタンパク質90(Hsp90)やX関連タンパク質2(XAP2)などと複合体を形成していたAhRは核内へ移行し、アリル炭化水素受容体核移行因子(ARNT)とヘテロ二量体を作って異物応答エレメント(XRE)に結合し、多数の標的遺伝子の転写を制御する。さらにAhRは、核因子κB (NF-κB)やシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、上皮成長因子受容体(EGFR)経路とのクロストーク、ユビキチン化を介した蛋白分解、細胞性Src(c-Src)を介するマイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MAPK)活性化など、非古典的経路も通じて多面的に作用する。近年のクライオ電子顕微鏡解析や結晶構造解析によって、AhRのPAS-Bドメインのリガンド結合ポケットや活性化に伴うループ再構成が明らかとなり、AhRが多様な化合物に応答する構造基盤が具体化した。AhRを活性化するリガンドには、環境毒性物質だけでなく、食事由来成分、腸内細菌や皮膚常在菌が産生するトリプトファン代謝物、宿主内因性代謝物が含まれ、その作用は組織、細胞種、炎症状態、濃度によって大きく変化する。こうしたAhRシグナルの破綻は、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、自己免疫性疾患、がんに関与しうる一方、治療標的としても有望であり、実際にタピナロフは乾癬とアトピー性皮膚炎に対するAhR標的薬として実用化されている。AhRは単なる毒性受容体ではなく、外界環境と内因性代謝シグナルを統合し、恒常性と病態形成を制御する重要な調節因子として再定義されつつある。
山川真菜 2026/03