No.194
The aryl hydrocarbon receptor: a rehabilitated target for therapeutic immune modulation
Carolina M. Polonio, Kimberly A. McHale, David H. Sherr, David Rubenstein, Francisco J. Quintana
Nat Rev Drug Discov. 2025 August; 24(8): 610–630. doi:10.1038/s41573-025-01172-x.
Nat Rev Drug Discov. 2025 August; 24(8): 610–630. doi:10.1038/s41573-025-01172-x.
アリル炭化水素受容体:治療的免疫調節における再評価された標的
アリル炭化水素受容体(AhR)は、もともとダイオキシンなどの環境汚染物質の毒性作用を媒介する標的として最初に同定されたリガンド活性化転写因子であるが、近年、免疫応答を制御する重要な転写因子として再評価されている。AhRは環境化学物質に加え、トリプトファン代謝産物、腸内細菌由来代謝物、食事由来化合物など多様なリガンドによって活性化される。活性化されたAhRは核内に移行し、標的遺伝子の転写を調節することで、免疫細胞の分化や炎症反応を制御する。特にT細胞分化においては、Th17細胞や制御性T細胞(Treg)の分化に影響し、免疫応答のバランスを調節する。またAhRは樹状細胞、マクロファージなど多様な免疫細胞にも関与し、粘膜免疫や炎症反応に関与する。これらの機能から、AhRは自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症、さらには腫瘍免疫において重要な役割を担うことが明らかになっている。実際、初のAhR作動薬であるタピナロフが乾癬治療薬として最近承認されている。また腫瘍では、トリプトファン代謝産物であるキヌレニンがAhRを活性化し、免疫抑制的な腫瘍微小環境の形成に寄与することが示されている。このような知見を背景に、AhRを標的とした創薬が進められており、AhRアゴニストは炎症性疾患の治療薬として、AhRアンタゴニストはがん免疫療法の新たな治療薬として期待されている。
橋本弘規 2026/03